新着情報 開智所沢小学校 > ブログ > Croquis No.26 ~北越雪譜(2年フィールドワーク特別編) 新着情報 新着一覧 お知らせ 入試情報 ブログ Croquis No.26 ~北越雪譜(2年フィールドワーク特別編) 2026.01.26 「…初雪の積りたるをそのまゝにしておけば、再びふる雪を添えて一丈にあまる事もあれば、一度降れば一度掃(はら)ふ、是を里ことばに雪掘といふ。土を掘るがごとくするゆゑにかくいふ也。掘らざれば家の用路を塞ぎ、人家を埋めて人の出づべき処もなく、力強き家も幾万斤の雪の重さに推し砕かれんことをおそるゝゆゑ、家として雪を掘らざるはなし。…」 この文章は、江戸後期に越後国の商人・鈴木牧之が雪国の生活を記録した『北越雪譜』の一節です。岩波文庫『北越雪譜』の表紙には「美しく舞い散る雪も、ここ北越塩沢(現在の南魚沼市)の地ではすさまじい自然の脅威となり、人々の暮らしを圧迫しつづける。著者牧之は、雪とたたかい、雪と共に生き、雪の中に死んでゆく里人の風俗習慣や生活を、雪国の動物と人間のかかわりや雪中の幽霊のような奇現象とともに、珍しい挿絵をまじえて紹介する。江戸期の雪国百科全書。」という、国文学者・益田勝実さんの解説文が載っています。 1月22日~23日、一泊二日の行程で2年生の雪国フィールドワークが、折しも警報級の大雪に見舞われた新潟県魚沼市で実施されました。その頃、魚沼市でも山あいの守門地区あたりの積雪は2.5mを超えていたそうです。牧之は“一丈(約3m)にあまる”と書いていますがそれはかなりリアルな表現であるように思います。この写真は、浦佐駅から宿舎であるゆのたに荘に向けて、魚野川沿いの三国街道を進む2号車の様子です。国道でさえ、道路脇には雪の壁が生まれつつありました。 2年生の雪国フィールドワークは、「遊びは、場所の特徴を活かして行われる」というセントラルアイディアに基づいて実施される探究活動です。初日の午後、子どもたちは時おりはげしく降る雪のなか、掘る・創る・滑るといった様々な遊びを体験するため、雪の塊に果敢に“挑んで”いきました。 もう何日も細かい粉雪があとからあとから降り積もっているのでしょう、踏み出した足がしばしば膝の上まで雪に埋もれてしまって身動きがとれなくなります。それでも子どもたちはたくましいですね。しばらく格闘するうちに雪に慣れて、いろいろな遊び方を思いついていきます。 それにしても、なんという雪景色でしょうか。益田勝実さんは“雪中の幽霊のような奇現象”と表現していましたが、例えば針葉樹の枝に積もった雪を見つめていると、それが無数のゴーストのように見えて来ます。無機物であると頭ではわかっていても、雪が描き出す風景に何か不思議な力が働いているように感じてしまうのは、昔の人々も現代の私たちもきっと同じでしょう。 夜のあいだも間断なく雪は降り続きました。宿舎の大きな屋根に積もった雪が、重みに耐えかねて屋根を滑り落ちていく時の、深く響く唸り声のような音も聞きました。夜が明けた時、そこには色彩と音とがすっかり封じ込められた沈黙の風景が、粛々とひろがっておりました。風の形を自在に描く雪の一粒一粒を目で追いながら、子どもたちの起床時間でその沈黙が破られるまでの間、まさに心が洗われるような小半刻を過ごしました。 開智所沢小学校 片岡哲郎