新着情報 開智所沢小学校 > ブログ > Croquis No.15 ~拝啓 サクラさく 新着情報 新着一覧 在校生の様子 お知らせ イベント 入試情報 ブログ Croquis No.15 ~拝啓 サクラさく 2025.04.07 東川沿いの桜並木が、満開の時を迎えました。 ぐずついた天候が続いた春休みでしたが、4月4日には久しぶりに青空が広がり、桜本来の花の色が際立ちました。『拝啓 サクラさく』は、1995年に用美社という出版社が発行した絵本の題名です。作者である作詞家・コピーライターの日暮真三さんがご自身のブログ「銀座四丁目その日暮」のなかで、この絵本の誕生についてこう述懐しています。「もともとは、いまはない千鳥ヶ淵のフェヤーモントホテルの依頼でつくった小さな絵本です。(イラストレーターの)黒田征太郎さんがホテルの一室にこもって描きためた何百点ものサクラの絵のなかから、長友啓典さん(グラフィックデザイナー)がランダムにえらんで、…ぼくが文章をつけました。三人三様の想いがぶつかって生まれた、即興劇のような奇跡の一冊です。」 フェヤーモントホテルは、1951年に千鳥ヶ淵で開業したホテルの名。毎年、千鳥ヶ淵の桜が開花すると、「皇居のお堀 千鳥ヶ淵の桜が 咲きはじめました。」という三行の新聞広告を出していたことで知られています。とりわけ、ホテルの一階にあったブラスリー・ドゥ・ラ・ヴェルデュールというティールームは桜を見る特等席でした。松任谷由実さんが1983年に発表した『経る時』という楽曲は、このティールームが舞台です。彼女は、ティールームの席から見上げる桜吹雪の風景を、「うす紅の砂時計の底」と表現しました。このフレーズは、星の数ほどある彼女の楽曲のなかでも、まさに出色の“見立て”ではないかと私は思います。フェヤーモントホテルは2002年1月、老朽化のため惜しまれながら閉館しました。 4月5日は土曜日でしたので、学校からの帰り道にところざわサクラタウンに立ち寄りました。 広場にはキッチンカーが並び、多くの市民の方々がお花見を楽しんでおられました。デッキに立てば、桜並木越しに開智所沢の校舎を望むことができます。まだ校舎建築中だった2年前は、サクラタウンのホールをお借りして学校説明会を開催するたび、徐々に学校が形を成していく様子をこの場所から眺めたものでした。私たちの学校がこの街の風景に仲間入りしてまだわずか1年ですが、その時間もまた、紛れもなくこの桜の砂時計のなかにあります。 サクラタウンの隣には、武蔵野の雑木林の面影を残す東所沢公園の木立が広がっています。椿もまた、武蔵野の春を彩る花。肉厚の花弁の鮮やかな色調は、淡い桜の花とは対照的です。 潔いほどに花をまるごと地に落とす椿の散り方は、万葉の時代から注目されていたようで、「わが門の片山都婆伎(つばき)まこと汝わが手触れなな土に落ちかも」という歌が詠まれています。あとからあとから、風の形になって散ってゆく桜吹雪とは、散り方においても好対照ですね。「散ることを知りながら 咲くことを恐れない。だから、サクラが好き。(『拝啓 サクラさく』より)」春の花は、その散り方すら愛おしく思われます。 少し前までは面相で描いたような冬木立の風景でしたが、ここにきて一斉に芽吹き、梢は賑やかになりました。 4月9日は開校二年目の入学式。また、新しい物語が始まります。 開智所沢小学校 片岡哲郎