新着情報 開智所沢小学校 > ブログ > Croquis No.14 ~啓蟄やわれらは何をかく急ぐ 新着情報 新着一覧 在校生の様子 お知らせ イベント 入試情報 ブログ Croquis No.14 ~啓蟄やわれらは何をかく急ぐ 2025.03.08 ひな祭りの日の午後から降り始めた雪は4日の朝にかけて雪景色を描きました。その雪は4日の午前中にははかなく融けていきましたが、4日の夕刻から夜にかけてまた降りしきり、翌3月5日、冬に戻ったかのような冷え込みのなかで、暦は二十四節気の啓蟄を迎えました。 少し前に、東川にかかる新日比田橋から少しKADOKAWAの方に歩いたところに、まだ小ぶりの河津桜が三本並んで立っていることを地元の方に教わっていましたので、啓蟄の朝に通学路から少しだけ寄り道をしましたら、 五分咲きの花びらが雨粒を溜めて、まるでガラス細工のように透き通って見えました。 河津桜は、1955年に静岡県河津町に暮らす飯田勝美さんという人が河津川沿いの雑草の中で偶然に発見した一本を自宅の庭に植えたことが始まりです。やがてそれが新たな品種であることがわかり、土地の名をとって河津桜と名付けられました。ご承知の通り河津桜は、オオシマザクラ由来の大輪の花と、カンヒザクラ由来の濃い紅色、そして早咲きが特徴です。名前の由来となった河津町では今、河津川沿いに約850本、町全体で8,000本ほど植えられており、毎年2月には、少し早い春を求めて多くの観光客が訪れています。今年は少し遅咲きだったようで、2月28日までの予定だった河津桜まつりが、3月9日まで延長されるのだとか。そう言えば年明けの梅の開花も、東京周辺はかなり遅かったと聞きました。本格的な春の訪れが待たれます。 こちらは、3月4日の朝、学校正門付近から眺めた東所沢の様子です。 三月の雪といえば、私たちの世代は反射的に「なごり雪」という言葉を想起します。「東京で見る雪はこれが最後…」という歌詞から、どうしても学生生活を終えた若者たちの別れのシーンが浮かびますが、伊勢正三さんの述懐では、着想を得たのは大分県津久見駅、伊勢さんの故郷の駅なのだとか。本当は東京に旅立つ人を故郷から見送る別れだったのでしょうか。津久見駅には今、なごり雪の記念碑が立っています。学校という場に身を置いていますと、どうしても三月はセンチメンタルな思い出が重なります。前職の頃を振り返りますと、高校卒業式が啓蟄と重なることがよくありました。告辞の冒頭で「啓蟄やわれらは何をかく急ぐ」中村汀女の一句を、好んで引用したものです。卒業、別れ、新生活への期待、戸惑い…様々な想いが交錯する三月の時間は、あたかも瀬を下るように慌ただしく流れていきます。 そんなことを懐かしく思い出しながら、雪が融けたグラウンドを眺めていますと、枯れてしまったと思っていた芝生のあちらこちらから、新しいみどりが湧き出している様子が目に入りました。 このところの雪や雨が、芝の芽吹きを後押ししたのでしょうか。春、三月、弥生の候。自然界が鮮やかに反転する瞬間を、まさに私たちは目の当たりにしているのです。 開智所沢小学校 片岡哲郎