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Croquis No.11  ~落ち葉のゆくえ

 

 十一月二十七日 「昨夜の風雨は今朝なごりなく晴れ、日うららかに昇りぬ。屋後の丘に立ちて望めば富士山真白ろに連山の上に聳ゆ。風清く気澄めり。げに初冬の朝なるかな…。」

明治の文豪・国木田独歩は、短編『武蔵野』の冒頭部分で、自らの日記の文章を引用しています。開智所沢小学校は、ゆるゆると坂を登った松郷の高台にありますので、11月の下旬ともなれば毎朝、芝グラウンド越しに玲瓏たる富士山の姿を眺めることができます。

息を弾ませながら登校する子どもたちが富士山の姿にしばし足を止める、初冬らしい朝の登校風景です。所沢中等のグラウンドでは、人工芝を敷設する工事が進んでいます。来春にはこの風景も様変わりしていることでしょう。

 夏の暑さが秋になっても居座り続けたことで、各地の紅葉の色づきが例年より遅くなっていると報じられています。

こちらは、11月16日に撮影した東所沢公園の様子です。雑木林の紅葉は、見頃と言われる時期よりも少し前の方が味わい深く感じます。赤や黄色といったあたりまえの色だけでなく、深緑色や竹色、芥子色まで、ありったけの絵の具を一度に混ぜ広げたパレットの上で、そのひと色ひと色がお互いを引き立て合っています。そんな、ひとときの秋の宴も過ぎて、一枚また一枚とその葉を北風に委ねながら、雑木林は日に日にその色を失い、それにつれて武蔵野の空は少しづつ広くなっていきます。

 風に運ばれた落ち葉はどこまで行くのでしょう。11月下旬、1年生は生活科の時間に、各自の家の近くから落ち葉を持ち寄って、思い思いに落ち葉アートを楽しみました。

この班の作品、じっと見ていると画面左に大きな鳥の形が見えてきます。右は、なにかの花でしょうか。きっと落ち葉を丁寧に扱ったのでしょう、一枚一枚が確かに秋の色を残しています。落ち葉は子どもたちの感性に、しっかりと届いているようですね。

 さて、11月29日から、学校近隣のところざわサクラタウンで、恒例となっている冬のライトアップが始まりました。

サクラタウンのシンボルである大きな高野槇を中心に、地元ゆかりのアーティストさんたちが光の装飾やオブジェを披露しています。サクラタウンのサイトによれば、今年のメインテーマは「Look Back I’llrumination」、I will rumination(反芻する)からの造語で、せわしなく過ぎた年の最後に、少しだけゆっくり立ち止まって、振り返り、想いを馳せ、時を感じることのできるスポットという意味が込められているのだとか。開智所沢開校の一年が過ぎて行きます。ご縁を頂いた全ての方々に、改めて感謝申し上げます。

 写真では少しわかりづらいですが、武蔵野坐令和神社の三角の社殿の上では、宵の明星がひときわ明るい光を放っていました。「星は、すばる。ひこ星。ゆふづつ。…」かの清少納言も、夜空の星のTOP3に金星(ゆふづつ)の名を挙げています。冬に向かう人々の心を照らし続ける金星は、1000年前となんら変わらぬ存在感を放っています。

開智所沢小学校  片岡 哲郎