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風の音づれ Vol.38 黒南風

 先週6月14日(水)の朝、つくばエクスプレス守谷駅と関東鉄道新守谷駅前に、募金を呼び掛ける中学生の大きな声が響きました。守谷市内4中学校の生徒会が、台風2号や梅雨前線の影響による6月3日の大雨で約600棟が浸水被害にあった取手市双葉地区を支援するために、街頭募金活動を展開したのです。どこでもスマホでpayする世の中、あわてて財布を確かめながら、心ばかりの協力をさせて頂きました。被害にあわれた地域の皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
 わずか一昼夜で平年の6月ひと月分を超える雨量が記録されるなか、関東鉄道やJR武蔵野線も大きな影響を受けたあの日の大雨の印象が強いせいか、関東地方の梅雨入りが平年並みの6月8日と聞いて、「あれ?まだ梅雨に入ってなかったの?」と首を傾げた人も多かったことでしょう。そうかと思えばこの週末は梅雨晴の強い日差しを受けて、真夏を思わせる気温が記録されるなど、その極端な天気の振れ幅に、気が滅入りそうな日々が続きます。
 黒南風(くろはえ)という季語があります。梅雨の初めのころ、雨を含んだ黒雲を連れて吹く、強い南風のことです。雨雲の黒さとともに、梅雨を迎えて鬱々とする気分を、黒という色で表しているのでしょう。

例えばこの写真は、開智望の2階の窓から眺めた6月16日の午後4時ころの景色です。「一天にわかに掻き曇り…」という古めかしい表現がぴったりなほど、急速に広がっていくCGのような黒雲の下を、雨を覚悟した乗客とともに走りぬけていく常総線の車体の赤が、緊迫した雰囲気をいっそう強調しています。
ところがこの日は、強い雨に見舞われることもなく、一時間後には黒雲がちぎれて青空が広がりました。

この季節には珍しいほどに澄んだ空のもと、秀麗な裾野を広げる筑波山の姿がくっきりと見えています。オレンジの光に包まれながら下校する、幸せな時間。それが何月何日の出来事かはきっと忘れてしまうでしょうけれど、小学生の頃のそんな幸福の記憶は、大人になるまでずっと心に留まることでしょう。

 この日の帰り道、道端に咲く気高い紫の花を見つけました。この季節になるとあちこちの街角を彩るこの花はアガパンサス。ギリシャ語の「アガペー(自己犠牲の愛・神の愛)」と「アントス(花)」という意味を併せ持つ、美しい花です。鬱陶しい梅雨の時期ですが、この季節ならではの喜びをいくつも見出しながら、過ごしていきたいですね。

(片岡)