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Croquis No.24 ~冬は未来を包み、未来をはぐくむ

「冬だ、冬だ、何処もかも冬だ/見わたすかぎり冬だ/再び僕に会ひに来た硬骨な冬/冬よ、冬よ/躍れ、叫べ、僕の手を握れ/大きな公孫樹の木を丸坊主にした冬/きらきらと星の頭を削り出した冬/秩父、箱根、それよりもでかい富士の山を張り飛ばして来た冬/そして、関八州の野や山にひゆうひゆうと笛をならして騒ぎ廻る冬…」 「冬の詩 (高村光太郎)」より抜粋

冬至、クリスマス、仕事納め…年の瀬とはよく言ったもので、これから暦はあっという間にめくられていきます。光太郎の詩にあるように、さくらタウンに隣接する東所沢公園の雑木林も、もうあらかた葉を落としました。

「むさしのの空真青なる落ち葉かな」武蔵野に暮らす私たちにとって水原秋櫻子のこの一句は、何だか自分たちのための歌のように思えるのです。雑木林や街路樹の葉が落ちていくにつれて、澄んだ青空が広がっていくこの時期の武蔵野の風景を的確に捉えているように感じられるからです。

 

小学校開校時に植えたトチノキも、2回目の冬を越していきます。枝先には、樹脂で覆われた固い冬芽がいくつも天を指しています。

落葉樹の冬芽は、春に開く芽を冬の寒さや鳥の害から守るために形成されるものです。冒頭の「冬の詩」は比較的長い詩ですが、高村光太郎はその詩の最後の方に、こんなフレーズを詠み込んでいます。「冬は未来を包み、未来をはぐくむ」もしかすると光太郎は木々の冬芽の姿を見つめながら、「冬の詩」を編んでいたのかも知れませんね。

さて、今の時期の所沢市の日の入りの時刻は16時30分頃ですから、アフタースクールの活動を終えた子どもたちがバスに乗り込む頃には、夜の帳がもう富士の姿を包み始めています。冬が“きらきらと星の頭を削りだす”時間です。

今の時期は各地で、駅前をにぎやかに彩るイルミネーションが話題となります。「ウェザーニュース」のサイトによれば、16世紀にかのマルティン・ルターが木の枝にたくさんの蠟燭を立てて星空に見立てたのが起源だとか。日本では1904年に明治屋銀座店がクリスマスイルミネーションを点灯して、その先駆けとなりました。ちなみに、東所沢駅前も今、少しつつましい規模ではありますが、イルミネーションで照らされています。

聞くところによれば、東所沢駅前商店街が2021年に「子どもたちの笑顔のためにイルミネーションを灯したい」というクラウドファンディングによって立ち上げたプロジェクトで、それ以来、地域の子どもたちも参加してこのプロジェクトが続いているそうです。派手なイルミネーションで豪華に飾り付けられた街には多くの人が集まりますが、子どもたちと一緒に街に明かりを灯すこの取り組みの方が、ほっこりと温かく感じられますね。

                                     開智所沢小学校 片岡哲郎