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Croquis No.16 ~心に節をつくる時

 連休中の子どもの日が“立夏”、季節の回り舞台もぐるりと趣を変えていきます。

 行く春を惜しむ季語の一つが「躑躅(ツツジ)」です。開智所沢小学校の通学路にも、一年生と背比べをするかのようにツツジの花が咲き揃いました。

 通学路に咲くツツジの記憶というのは、半世紀の時を経ても色褪せることはありません。私も、少年の頃は下校時に、ちょっとした解放感も手伝ったのでしょう、友だちと一緒に道端のツツジの花を摘んで、蜜を吸って歩いたことを思い出します。レンゲツツジという種類に毒性があるということが広く周知された今では、そんなことをする子どもはいなくなりました。

 「躑躅」という漢字には躑(たたずむ、行きなやむ)・躅(足摺りする、あがく)という意味があり、毒性を持っているツツジに馬や羊が寄りつかない様子からその名が付いたのだと、図鑑や各種サイトでは紹介されています。そうなのだ、と納得はするのですが、ツツジの蜜を吸って遊んでいたかつての悪ガキとしては、別解めいたものを口にしたくなります。躑躅を前に行きなやむのは、あまりに爽やかな5月の青空のもとで、それと知らず心の中に抱えこんでいる滲みのような4月の屈託がくっきりと描き出されてしまうことに起因する、という説はいかがでしょう?

 学校の手前のゆるやかな坂道の法面にも、一括りに雑草と言われそうな草花がたくましく茂り始めています。そのなかで、目を引くのはハルジオンでしょうか。

 こちらの蜜は安全なのでしょう、テントウムシが花に埋もれていました。2022年4月24日の朝日新聞「天声人語」は、ハルジオンとヒメジョオンの見分け方について「蕾が下を向くのがハルジオン」としたうえで、植物学者・稲垣栄洋さんの『大事なことは植物が教えてくれる』の一節を紹介していました。曰く「節(ふし)を作ることは植物の成長にとって一休みのように見える。しかしそんな草はちぎれても刈られても、節目から再び芽を出すのだ」。“五月病”というのはなんだか当たり前すぎる言葉ですが、春から夏へと移り行くなかで、思わず行きなやむ人の多い時期です。俯いたハルジオンの蕾が次第に上を向いて花をひらく姿に力づけられる人も、案外少なくないかも知れません。連休明けのこの時期は、むしろ一度立ち止まって、自分の心に節をつくることが大切なのだと、ポジティヴに捉えることにしましょう。

 昨年の開校時に植えたトチノキの苗が、一回り大きくなって、夏色を帯びた5月の青空に矢印のような葉を向けています。

5月の終わりに予定されているスポーツフェスティバルを目指して、各ホームではダンスバトルの練習のギアがグッと上がっていくことでしょう。上級生と下級生が息を合わせてダンスのクオリティを上げるのは、そう簡単ではありません。

うまくいかない時期を乗り越えてこそ、言葉にならない感動が共有されるのです。学校行事もまた、子どもたちにとっては大きな“節”に違いありません。

開智所沢小学校 片岡哲郎