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Croquis No.8  ~秋の薄衣をまとって

 「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉を、今年は半信半疑に使っていましたが、彼岸明けを前にした9月24日の朝は、あわてて上着を用意する肌寒い出勤となりました。東所沢の改札を出て駅前通りを歩きながら、街全体が薄衣をまとったような気がしたのは、ハナミズキの葉が一斉に色づき始めたからでしょうか。

 ハナミズキは、大正4年に東京市長の尾崎行雄がアメリカ・ワシントンD.C.に桜の苗を送ったその返礼としてアメリカから送られて来ました。成長が遅く管理がしやすいこと、桜と入れ替わりに花を咲かせることなど、街路樹にふさわしい条件を備えたハナミズキは日本の都市景観にすっかり溶け込み、今では「都の木」であるイチョウを抑えて、東京都で最も本数の多い街路樹となりました。開智所沢小学校の通学路である東所沢駅前通りでも、駅前から新日比田橋までずっとハナミズキが並んでいます。次第に翳りゆく茜空のような落ち着いた葉の色づきと、葉の上で熟してゆく小さな実の艶やかな真朱のコントラストが、これから街を歩く人々の眼を楽しませてくれることでしょう。

 東川にかかる新日比田橋から、川沿いに並ぶ桜の様子をうかがいます。秋に色づく様々な樹木のなかでも、桜紅葉の描き出す情感は格別だと、常々私は感じています。赤や黄色だけでなく、鮮烈な橙色や褪せた緑、湿気を含んだレンガ色までが複雑に重なり合う秋の桜並木は、あたかもセザンヌの描くリンゴの色彩のようでもあります。

 ただ、近年は色づく前になぜか葉を落としてしまう桜の木が多いことを、ずっと訝しく思っておりました。東川の桜もご覧の通りです。これもまた、夏の猛暑に原因があるのだとか。桜は、特に乾燥に弱い樹木なので、降水量が少なく猛暑続きの夏には、葉から水分が蒸発するのを防ごうとして自ら葉を落とすのだそうです。次の春の芽吹きには支障がないそうですが、地球温暖化のなかで桜紅葉という言葉が喪われていくのは忍びなく思います。

 新日比田橋から学校までの道沿いに、コスモスが咲く一角があります。

駅近くで多く見られるキバナコスモスも良いですが、秋桜と書いて連想するのはやはりこのピンク色の花びらでしょう。背丈1mほどのコスモスは秋風の囁きに合わせて絶えず揺れ動き、写真に撮られることに恥じらいを見せます。小学生にとってはちょうど目線の高さですので、顔を近づけてコスモスの花を見つめてほしいと思います。ピンク色の花びらは、形を舌になぞらえて舌状花と呼ばれるもの。花びらの中央部分に、黄色の小さな筒のようなものがたくさん集まっている、この部分を筒状花と呼びます。開き切る前の筒状花は、なんと見事な星形をしているのです。

それは直径1cmに満たない小宇宙。「そうなのか、だからCosmosなんだ!」そんな小さな驚きとともに、秋の暦は進んでいきます。

開智所沢小学校  片岡 哲郎