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Croquis No.3  ~菜の花と“農鳥”

 開智所沢小学校のグラウンドには、校舎が完成するタイミングに合わせて天然芝が敷かれました。環境保全に対する意識が高い所沢市に開校するにあたり、グラウンドの緑化及びその維持は、私たちが取り組むべき大切なテーマです。

 たくさんの芝のマットを敷き詰めた小学校グラウンドは、4月に入って次第に緑色を帯びていきましたが、月半ばを過ぎたあたりからちらほらと菜の花が見られるようになりました。菜の花の種はタンポポのように風で運ばれるものではないので、おそらくもともと芝生のシートのなかに種が隠れていたのでしょう。芝が根付くまで様子を見ましょうか、と話していたら、GWの連休が明けた時にはグラウンド一面が菜の花畑のようになっていました。菜の花の繁殖力と成長の早さにはびっくりさせられます。5月10日の朝、3年生はつかの間の菜の花畑で理科の授業(観察)を楽しんでいました。

 3年間、つくばみらい市の開智望小学校に通勤した私は、利根川や江戸川の土手を菜の花が埋め尽くす3月の車窓風景が大好きでした。一方で、菜の花の根は太く、それが腐るとミミズが集まって穴ができ、ミミズを餌とするモグラや、モグラを捕食するキツネが穴を広げて堤防を傷つけると、夏場の増水で河川が決壊する原因となりかねない(『日本経済新聞』2017年4月30日)として、昨今では土手の菜の花は駆除の対象となっているのだとか。私たちも、芝グラウンドを維持するためにはもちろん抜かなければなりませんが、それにしても春の陽光をあびて歓声をあげる子どもたちと、菜の花ごしに顔をのぞかせる富士山というこの構図は、なんと心あたたまる長閑な風景でしょう。

 富士山と言えば、4月25日のNHKが伝えていたのは、「山梨県富士吉田市は、富士山の雪形である“農鳥”が確認されたと発表した。」というニュースでした。農鳥とは、例年4月下旬から5月にかけて富士山の雪解けが進み、山肌に残った雪が鳥の形に見えることから名付けられた雪形で、富士北麓一帯では田植えの時期の到来を告げる目安とされています。所沢からでは、春霞の時期に肉眼で雪形を確認することはなかなか困難ですが、さきほどの写真を拡大してみますと、

富士山の右側面、手前にあるシラカシの葉と重なっていてあまり自信はありませんが、角度から考えても、農鳥らしき雪形が見えているように思えます。

 5月に入って、学校では開智教育の一つの柱である“異学年学級”の活動がいよいよ始まりました。開校初年度は誰も異学年学級を経験していないのですが、どのホームでも上級生がしっかりとリードしている様子は大変頼もしく感じられます。目下のところ、5月22日に予定されている春のエクスカーション(@所沢航空記念公園)の計画が、各ホームで練られています。

ホームのホワイトボードを見ると、下級生のために平仮名で書いたり、決定事項を誤って消してしまうことがないように小さなボードに書き写したりと、上級生が本当に細かいところまで工夫している様子がうかがえます。

 農鳥が刻を告げ、開智所沢小学校の子どもたちも一気にそのギアを上げていきます。

開智所沢小学校  片岡 哲郎