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風の音づれ Vol.6 Soul food

Vol.5でご報告した小学校第2回学校説明会は、所沢駅西口の西武所沢SC8階にある所沢YTJホールで開催されました。せっかくですので、学校説明会が終了したあと、(仮称)開智所沢小学校・中等教育学校のホームタウンとなる所沢の街を少し歩いてみました。 

西武所沢SCと、道路一本挟んで隣接する場所には、真新しい高層マンションが建ち、その横では来年秋のオープンが予定される大型商業施設の建設が進んでいます。かつての「ベッドタウン」から、“住む”こと自体の価値を楽しむ「リビングタウン」へと変貌しつつある、まさに新時代の所沢を象徴する風景と言えそうです。

その一方、所沢駅西口ロータリーから北にのびる商店街・所沢プロぺ通りにも、日曜の午後とあって買い物や食事を楽しむ多くの人々の姿がありました。プロぺ商店街の公式サイトによれば、以前の所沢駅前名店通り商店街が「所沢プロぺ商店街」と名を改めたのは昭和55年。航空発祥の地・所沢のイメージに重ねて、「躍進・推進」を意味する「プロペル」という言葉を採ったとのことです。

全長300mほどのプロぺ商店街を抜けると、その先には交通量の多いファルマン通りが連なっています。ファルマン通りの名前は、以前にもこのコラムでご紹介したアンリ・ファルマン機に由来しています。高層マンションが並ぶファルマン通り交差点を渡り、すぐの路地を入ったところに、お目当てのお店がありました。60年以上も続く焼きだんごの老舗、奈美喜屋さんです。

武蔵野台地の上に開けた所沢はもともと水資源に乏しく、江戸時代に行われた大規模な“新田”開発でも、実際にひらかれたのは水田ではなく畑でした。所沢市のHPによれば、かつて農家の人々は自家用に陸稲を栽培していましたが、陸稲は炊いて食べるとぽそぽそしがちなので、粉にひき、蒸して食べたのだとか。言うなれば、所沢の焼きだんごは昔の人々の暮らしに根ざした、所沢のソウルフードなのです。現在でも、市内のあちこちに評判のだんご屋さんが点在しています。

たまたま、お客は私一人。窓口でだんごを注文すると、ご高齢のご主人が私一人のために焼き台に炭を投げ入れ、火を起こし、だんごを焼いて下さいます。年季の入った赤い渋団扇が、ご主人のこだわりを物語っています。醤油をまとったうるち米のだんごは、もち米とは違うざらっとした舌ざわりとしっかりした歯応え、そして何とも言えない香ばしさが印象に残りました。

リビングタウンという耳障りのいい標語とともに、こんなにも素朴な、そしてほっこりした昔ながらの営みにも光が差すと良いですね。

(片岡)